佐賀県書道展

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第25回佐賀県書道展によせて

審査委員長  書は、造形、線質が二つの大きな要素である。造形は古典や手本をもとに熱心に手習いをすればある程度まで促成できるが、もう一つの線質は日ごろの鍛錬による積み重ねが必要である。書の世界では、思うような線を引けるようになるために、古今ののうしょ(書の巧みな人)が心血を注いできている。
 ところで、佐賀県書道展は日ごろの成果の発表の場所である。まだまだ未熟で上達してから出品しようと思っている人が多いかもしれない。展覧会のための創作は、日々の鍛錬とは違う緊張感がある。さらに、出品にあたり現在の実力をもとに作品を完成しなければいけない。部分、部分も重要であるが、何より全体の調和が作品の出来を左右する。これは、書において最も重要な要素で、展覧会出品による完成度を高める鍛錬が、上達の階段を一気に登ることに繋がるのである。つまり、展覧会は自分の実力を試すことが出来る絶好の機会であると同時に、技量の格段の進歩にも繋がるのだ。
 書は伝統の古典に支えられての芸術であるが、作者が生きている時代性、各自の個性がきわめて重要である。臨書をして技術を修得した上で、自らの美の感性を加えた作品こそが魅力的で、高い評価も得られる。
 また、言い古されているが「書は人なり」という言葉がある。歴史に名をのこす人の“書”は、その人物を如実に物語る。その人に備わった品格が伝わってくる。作品のどこで感じるかは表現しがたいが、子供であれ、大人であれ、確かに作品には巧拙だけではなく、個性とともにその人格が表現されている。
 書展であるので、当然、技術の巧拙も審査の対象であるが、作品がもつ個性や品格というものも大切にしたい。

審査委員長 島谷弘幸
(九州国立博物館長 本年度審査委員長)