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<県書道展>講評 島谷弘幸審査委員長(九州国立博物館長)

2017年05月04日 10時08分
<県書道展>講評 島谷弘幸審査委員長(九州国立博物館長)


■漢字レベルの高さに驚き


 文字を表現する芸術としての書は、文字と書の関連が極めて重要である。書は、文章や語句などを表現したいという思いに駆られて筆を取るものである。このため、日ごろから自らの教養を高め、関心のある古典籍などを手に、多くの時間を割いて書作の題材を選定する。


 ただ、そうした書の鑑賞の常識を踏まえて、いろんな場面で誤解を恐れずに、私は“書はよめなくてもいい”とも話している。私は、書の古典であれ、現代書であれ、作品に向かうと格調美や全体の調和を味わう。その後に、造形美、連綿の美、余白と墨付のバランスの妙、そして散らしなどの表現を鑑賞する。さらに、どんな筆を使ったのか、どんな紙なのか、どんな墨を用いているのか、など興味は尽きない。


 その次に、何を書いているのか、何のために書いたのか、誰に依頼されたのか、などと関心は移っていく。この何を書いてあるかを強調しすぎると“書はむずかしい”となる。日本では“読み、書き、そろばん”といって教育の一環としての習字・書道がある。書道は入り易く奥が深い芸術であるが、まずは書の魅力を楽しんでほしい。


 今回の審査では、出品点数の多い漢字作品のレベルが高いことに驚かされた。賞の選考には大変苦慮したが、大賞には、少字数書の森園雅舟さんの「亀」を選んだ。造形、文字の配し方、筆の遅速や勢い、そして墨色の美しさなど、抜群の出来であった。


 準大賞には漢字部門からお二人。井上楓苑さんの「別意」。上から下へと流れる筆の勢いがあるが、決して筆が緩むことなくしっかりと受け止める力がある。小気味いいリズムで仕上げ、何より落款の入れ方が見事である。山下竹翠さんの「江南旅情」。これは、曲線と直線が織り成す空間、2文字から6文字にグルーピングされた一群の造形の美しさ、加えて絶妙の余白とともに相互に響きあう間の良さなど、見応えのある作品である。


 かな部門からもお二人。草野煌月さんの「鶯」は帖仕立てである。見開きごとに料紙の色目を変え、さまざまな散らしを展開する。着実な筆さばきと余白の造り方が絶妙。井上恵雲さんの「和歌三首」は巧みな墨量の変化と文字の大小で、平面であるはずの書に奥行きを与えている。中央が近くにあって、書き出しの部分は遠方にあるように見え、遠景・近景がある絵画のようである。平安時代後期の奔放自在な仮名に範をとった秀作である。


 最後のお一人は調和体の三藤遊海さんの「雄姿ふたたび」。悲惨な自然災害を読める書として表現する。強調したい部分を大きく強く、行頭・行末の処理も巧みで、気脈も一貫している。



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