2022年07月28日 19時15分
佐賀県立美術館(佐賀市)で開催中の「どがんなっとっと展」(佐賀新聞社主催)では、目の錯覚を利用した不思議な作品100点が並んでいる。手がけたのは、工学博士で明治大学研究特別教授の杉原厚吉さん(74)。錯覚アーティストとしても活躍していて、「『見る』ことには不思議がいっぱい。錯覚を楽しんでほしい」と呼びかけている。 「大好きな数学を使って世の中の役に立ちたい」。杉原さんは、その思いを胸に数理工学の道へ進んだ。ロボットの目の開発に携わる中で、だまし絵が立体として実現可能なことを発見した。1次方程式の応用で計算し、立体をつくっている。 目で見るとき、3次元の形が網膜に映ると奥行きの情報がなくなる。幾多もの可能性の中で脳が推測し、あり得そうなものを“決め打ち”しているという。 日常生活で錯覚を感じる場面も。例えば、交通事故が頻発するようなカーブでは、スピードを落としていても曲がり具合を錯覚しているケースがあるという。杉原さんは「『スピードを落とせ』より、『見かけより急』と呼びかけることが効果的」との考えを示す。 杉原さんは「ベスト錯覚コンテスト世界大会」での優勝経験もあるが、「制作の際に数式を使うのは私くらい」と笑う。「数学の勉強が何の役に立つのかと思っている学生も多い。こんな風にエンターテインメントでも、日常生活でも使うことを知ってもらいたい」と話す。(福本真理) ▽「どがんなっとっと展」の会期は9月4日まで。開場時間は午前9時半~午後6時。月曜休館。