三人展「Forward Stroke ―明日への眼差し―」佐賀県立美術館 – 佐賀新聞

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<三人展(中)>葉山有樹さん、細密描写と物語性で圧倒

2018年09月27日 12時26分
目を見張る細密描写で心をつかみ、めくるめく物語世界に引き込んで離さない―。紀元前にまでさかのぼる古今東西の歴史知識、綿密に構築された物語。陶芸家葉山有樹さん(57)=武雄市山内町=は、それらを白い磁肌に描ききる高い技術力とメッセージ性で、世界を圧倒する。

15歳で窯元に入り、有田焼の伝統技法を身につけた。24歳で独立し、2年後には孔子の国家観を元にした「鹿鳴ろくめい図」シリーズの制作を始めた。茂みに遊ぶ鹿たちを緻密に描いた細密画で、孔子が詩集「詩経」に込めた世界融和への願いを表した。「表現者として、文明の継承も使命のひとつ」。形骸化した伝統文様の意味や歴史的背景を今に伝えようとする、葉山作品の原点だ。

ここから歴史や神話を下敷きにした作品を次々に発表した。時には現代アニメーションの文化も取り入れながら、磁器に“物語”を吹き込んでいく。

筆を執る前に、作品で表現したい物語を原稿用紙に何枚もつむぐという。葉山さんは「物語ができたら、描くべきものは頭の中にある。あとはそれを再現するだけ」と柔和な笑顔を見せる。

インスタレーション作品を作るようになったのは、2007年に東京で開いた展覧会「A PATTERN ODYSSEY」から。学芸員とのやり取りによって、それまでの作品単体で完結する捉え方から、空間構成も作品と捉える考えに変化した。陶磁器を飛び出し展示空間にまで拡大。葉山さんの作品世界は、フィンランドも巡回した。

14年には入場無料のスタジオ兼ギャラリーを開設、現代アート作家の個展やレジデンス(滞在型制作)を実施。アジアを中心に窯業を学ぶ学生を教え、飛び回る生活を送っている。使命とする「文化の継承」は、表現だけにとどまらない。

人間国宝で西松浦郡有田町の陶芸家、十四代今泉今右衛門さんは「(葉山さんが)追求する精緻な表現は、確かな技術に支えられている」と話し、「工芸を現代アートとして新しい切り口で見せ、もの作りの考え方も新しい。自己プロデュースがしっかりしている」と評価する。

はやま・ゆうき 有田町生まれ。15歳で陶芸の世界に入り絵付けの技術を身につけ、24歳で武雄市山内町に窯を開いた。伝統的な文様や形状の背景を深く研究し、独自の世界観と高い技術力で工芸を現代美術に発展させる。


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