三人展「Forward Stroke ―明日への眼差し―」佐賀県立美術館 – 佐賀新聞

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<三人展(下)>八谷和彦さん、ジブリ映画の飛行機実現

2018年09月28日 11時00分
<三人展(下)>八谷和彦さん、ジブリ映画の飛行機実現
 ジブリ映画「風の谷のナウシカ」のメーヴェは、体をじかに機体に預け、鳥のような美しい形で空を飛ぶ。八谷和彦さん(52)=東京都、佐賀市出身=は、そんな夢のような一人乗り飛行機を完成させた。
 これまで、電子機器の技術を使うメディア・アーティストとして作品を手掛けてきた。ピンク色のクマがメールを運ぶソフト「ポストペット」(1997年)の開発者でもある。
 初期作「視聴覚交換マシン」(93年)は互いの視覚と聴覚を機械によって交換する。他人からの視点によって自身を見つめ、アイデンティティーの境界が曖昧になる。メーヴェの実機制作は、これまでの「コミュニケーション」をテーマにした作品とは一風異なる。
 メーヴェを実機制作する計画を思いついたのは、約20年前に訪ねた「龍勢まつり」の帰り道だった。まつりでは火薬や縄、竹筒を使った手作りロケットを打ち上げる。ロケットの火花に触発されたのかもしれない。「メーヴェを作るなら、どのぐらいの大きさになるだろう?」と考え始めた。帰りに友人と立ち寄ったハンバーガー店で、翼の大きさや重量を計算し、紙ナプキンに式を書き付けた。「本当に作れるかもしれない」
 だが航空機を制作するためには、長い期間と予算が必要だった。バランス感覚を必要とされるパイロットには、適正や俊敏な運動神経が必要となる。八谷さんは、中学・高校時代に器械体操の経験があった。「全部兼ね備えているのはアーティストで社長(当時)の自分しかいないと気付いた」
 無謀とも思えた実機制作だったが、「技術的に誰もやっていないから大変なだけ。時間をかければクリアできる」と冷静に語り、「制作を通して言えるのは、人間に不可能はないということ」と話す。
 三人展で作家に共通するのは、長い時間をかけて一つのゴールを追いかける「長距離ランナータイプ」の制作姿勢だと思っている。「池田さんは1つの作品に数年かけるし、葉山さんは修正がきかない緻密な作業。3人とも細かく、地味な作業の積み重ねで作品ができている」と分析し、三人展での競演を楽しみにしている。

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