三人展「Forward Stroke ―明日への眼差し―」佐賀県立美術館 – 佐賀新聞

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<弘道館2>「よかごとせんね」八谷和彦先生(メディア・アーティスト)

2018年11月15日 05時00分
<弘道館2>「よかごとせんね」八谷和彦先生(メディア・アーティスト)
幕末佐賀の藩校・弘道館2をイメージした県の事業「弘道館2」の8時間目が10月上旬、佐賀市で開かれ、メディア・アーティスト八谷和彦さん(52)=佐賀市出身=が講師を務めた。「破壊的イノベーション」をテーマに中学生から20代の社会人まで約20人が参加し、10年後の未来についてアイデアを膨らませた。その模様を紹介する。 ■15年かけたプロジェクト 県立美術館で開催中の「三人展」では、漫画・アニメ「風の谷のナウシカ」に登場する飛行装置「メーヴェ」をモチーフにした「M-02J」が展示されている。八谷さんは、メーヴェの実機を制作する「オープンスカイプロジェクト」の過程を受講者らに説明した。 2003年に始まったプロジェクトは2分の1模型の製作から始まり、グライダー機、ジェットエンジンを搭載した「M-02J」と順を追って進んだ。メーヴェは方向を安定させる尾翼がない無尾翼機で、「現実空間で飛ばす工夫が必要だった」と八谷さん。200回以上も試験飛行を行い、羽根の面積や操縦形態など改良を重ね、15年かけて完成させた。■テクノロジーで世の中を変える “破壊的イノベーション”を「世の中をひっくり返すテクノロジー」と話す八谷さん。社会に存在するインターネットやスマートフォン、AI(人工知能)などは一昔前のビジネスモデルの概念をテクノロジーが壊して生み出されたという。150年前の明治維新期に技術の発展で船や武器が作られたことにも触れ、「技術によって世の中が変わるのは明らかになっている」と説明。世の中にあるビジネスは40歳以上の大人が作ったものだといい、「未来は若者が創る。(若者が)すてき、おもしろいと思うことに合わせて社会は変わっていく」と説いた。■空想上のものを現実に オープンスカイプロジェクト以前にも、米SF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場する宙に浮くスケートボード「ホバーボード」や、ピンクのクマがメールを運ぶソフト「ポストペット」など、次々と新しいものを生み出してきた。八谷さんは「空想上のものを世の中に出現させるとたくさんの人が反応してくれる」と笑顔。「僕のことをクレイジーだと思うかもしれないが、世界にはクレイジーな人はたくさんいる。クレイジーな人たちによって世の中は変わるかもしれない」と話した。■10年後に何をするか 「好きなことを本当に続けるとどうなるのか、自分のドリームプランを考えて」。ワークショップで受講者たちはまず、A3の白紙に絵を交えながら経歴を書いた。続いて、今はまっていること、なぜ楽しいのか、10年後やりたいことなどの問いについて頭をひねった。 書き終えると、面白いアイデアに対して架空の紙幣で投資(投票)した。 「広告をつけた運賃無料のタクシー」や「話したい人と話を聞きたい人をつなぐマッチングサービス」などさまざまなアイデアが出た。中でも最多の投票数を獲得したアイデアは「THE帰宅」で、知らない土地に落とされたドローンが家まで帰ってくるという企画だった。八谷さんは「米国でロボットを置いて帰ってくるという試みがあったが壊されてしまった。そのリニューアル版になりそう」と実現可能なアイデアに興味を示した。■今の「楽しい」を大事に 八谷さんは、鍋島小時代はロボットやアニメ「宇宙戦艦ヤマト」のプラモデルを作り、城北中では器械体操を始めたという。新しい作品を作るのもM-02Jで空を飛ぶのも、「幼少期から大学までにやってきたことが今やっていることのほとんど」と笑みを浮かべる。 「おもしろいアイデアがあって、要所にきらっと光るものがあった」とワークショップ全体を振り返った八谷さん。「世の中には変わるものと変わらないものの2種類がある。(前者が)テクノロジーによる変化と、(後者が)幸せと思うかどうか。今の楽しいと思うことは将来に役に立つ。大事にして」とエールを送った。 Q.一番感動したことや達成したと思う瞬間 それぞれの作品に楽しい瞬間がたくさんある。オープンスカイプロジェクトでは、地面から30センチ操縦できただけでもびっくりしたし、「空飛ぶ気持ち」を味わえて幸せ。 達成感のある人生は幸せ。子どもの頃の履歴書を書くと楽しい気持ちの延長線に今があると気づく。今やっていることの中に本質があるから忘れないでほしい。Q.好きなことと得意なことを夢にするのは違うように思うがどうか 得意なことで勝負するのも大事。昔、佐賀新聞社で夢について講演した時、「夢はない」と答えた。夢と思っているとかなわない。実現可能であると信じてトレーニングすると達成可能であると思っている。 好きなことじゃないと人間は努力できないから、好きなことを核にしてやりたいことを捕らえた方がいい。夢は君たちの中にタネがあるから大事にして。ただ、芽を出すためには水や肥料をあげないといけない。 持ち味を生かして勝負するのが大事。世の中は変わっていくので、ふとした時に大きなチャンスが生まれる。得意なところは大事にして。波に乗れるか乗れないかは準備をすることで決まる。好きなことを続けていると波に乗れる。Q.失敗に対する心の捉え方は? 失敗すると落ち込むが、ものすごく大事。小さい失敗もしないと、てんぐになってしまって、それこそ危険。失敗した上で次に生かすという考え方でいい。若いうちは失敗してもリカバリーできるから、若い時はいっぱい失敗したほうがいい。Q.15年と長いプロジェクトの中で転機はあったか もちろんあった。予算がなくなった時もあったが、15年という期間はプラスだった。お金がなくなったり、東日本大震災が起こった時は一休みした。アートの場合は「完成した時が完成」という気持ちだったから、長く楽しめてラッキーと思っていた。長い仕事は飽きが来るので別の作品も作っていた。長いスパンの仕事はどうしても飽きるので、短いスパンの仕事も同時並行でやっていくと充実する。●芹田康暉さん(14)=武雄中2年=「未来のことを考えるのが難しかったが、履歴書を書くのは楽しかった。失敗してもいいから何でもやりなさいという言葉が勉強になった。苦手なことが多いので、何事にも挑戦していきたい」●江越未悠さん(19)=佐賀大学2年=「プロジェクトに取り組んだ15年間のうち、途中していない時期もあったというのを聞いて、寄り道しながらもやりたいことを続けていていいんだという安心感を持った。挑戦し続けられたらと思う」  「どうでんよかよ、よかごとせんね」。適当や自由とも取れる。大きな責任を感じず、どうでんよかと思ってやって。上の人に遠慮せず、君たちの好きなようにやりなさい。 

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