佐賀県書道展

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第27回佐賀県書道展によせて

審査委員長 書は文字が成立して以来、たえず美的追及がなされてきた。中国では、王羲之、初唐の三大家・顔真卿、日本でも三筆や三跡といった能書(字の上手い人)が現れ、それぞれの時代の文化を反映し、各々の個性を加味した作品が作られた。その書は、文字の造形、筆の運びによって表現される線質の二つが、大きな要素である。文字の形は古典や手本をもとに熱心に手習いをすればある程度まで促成できる。しかし、もう一つの線質は、古今の能書であっても思うような線を引くためには手習いを積み重ねる努力が必要であった。こうした造形や線質だけで書を鑑賞することも可能であるが、何を書くか、どう表現するか、それを最終的に筆者が決めて筆を執るのである。出品される皆さんも、その選択が難しいかもしれないが、何を書くかの過程も楽しんでほしい。
 その次の過程は、何も書かれていない紙面に筆を下ろす瞬間である。この時は、経験豊富な人も、経験が浅い人でも期待と不安が同居するであろうが、自らの美の感性のもとに書き進めて、作品を仕上げてほしい。書は、漢字であれ、仮名であれ、調和体であれ、また小字数作品でも、書き進める自分と、それを背後から俯瞰して全体を見据える自分、つまり異なる役割をこなす必要がある。いわば、指揮者の立場と演奏者の立場が同居しなければいけない。これが認識できると、作品が見違えてくる。
 今年の佐賀県書道展は、平成の時代から新たな年号となっての開催である。本展は日ごろの成果を発表する場所であるが、新しい時代の幕開けにあたり新たな書の流れを作る場所でもある。伝統を踏まえながらも、自らの個性を表現した作品を期待している。

審査委員長 島谷弘幸
(九州国立博物館長 本年度審査委員長)