佐賀県書道展

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第26回佐賀県書道展 講評

2018年05月26日 17時31分

漢字のレベル高く多彩(島谷弘幸 審査委員長 九州国立博物館長)

 
 書の分野において、古典を学び、それに習熟することが大切である。というのは、新しい自らの個性や感覚を表現するための技術を古典によって磨く必要があるからである。このために、書の学習には臨書がある。いわゆる評価の高い先人の書を手本として学ぶのである。

 この臨書も、形をしっかり真似る形臨、筆者の気持ちをも表現しようとする意臨があり、さらには手本を見ないで書く背臨と大きく3種類がある。学ぶ人のレベルに応じて、あるいは必要性に応じて使い分ける必要がある。

 これをさらに一歩進める倣書は、手本にした古典を参考にして別の詩や和歌を題材として作品を作ることである。これが創作の第一歩で、楽しくもあり、厳しくもある書の道を歩んでいくのである。いずれにしても書を愛好することは、自らの感性を豊かにすることなので、筆をとって手習いしても、鑑賞に特化して目習いしても、楽しむことが出来る。

 今回の審査での感想は、昨年と同様に出品作品の多い漢字作品のレベルが高く、なおかつバラエティに富んだ作風が多いというのが第一印象である。候補作品に縛りこむのも苦慮したが、最終的に大賞には太田恵泉さんの「張均の詩」を選んだ。筆の運びはもちろん造形的にも美しく、筆の流れも自然で、何より行間・字間などの余白の使い方が見事で、見ていて気持ちがいい作品である。審査後に聞けば、今年委嘱になったばかりであるということで、この一年の精進の結果であろう。

 準大賞の漢字部門はお二人。井上楓苑さんの行草作品は、上から下への文字の流れの筆が良く効いており、抜群の技量に裏づけられるものである。落款(らっかん)の入れ方も美しい。山田映泉さんの作品は佐賀県書道展には珍しい篆(てん)書作品である。篆書の筆法を手中にしており、しっかりとした造形美に加えて、運筆のリズムが心地よい。

 かな部門の準大賞は、草野煌月さんの「ひさかたの月」である。帖仕立で見開きごとに散らし書きに工夫を凝らし、リズミカルな筆法で文字の疎密や墨量の変化を加えた大変な労作である。実は、最後まで太田さんといずれを大賞にすべきか迷った作品である。これも選考後に分かったことであるが、草野さんは昨年も準大賞に選ばれており、安定した実力の持ち主で、今後、さらなる活躍が期待される。

 少字数部門からは牧山黄華さんの「運」。墨色の美しさと、筆の勢いと造形美が見事であった。

 調和体部門からは、三藤遊海さんの「八木重吉詩」。まず、空間構成の見事さに驚かされた。筆の弾力を十二分に使いこなした傑作である。

 最後に、墨象部門から、久保椋佳さんの「韻1」は、空間と墨付き部分の響きあい、それに多様な筆法が絡んだ秀作である。

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