佐賀県書道展

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<梧竹・蒼海顕彰第30回記念佐賀県書道展>審査委員長講評 鮮烈で堂々たる筆さばき

2022年05月21日 16時23分
<梧竹・蒼海顕彰第30回記念佐賀県書道展>審査委員長講評 鮮烈で堂々たる筆さばき
鍋島稲子 審査委員長(台東区立書道博物館主任研究員)

このたび、第30回記念の佐賀県書道展において、2度目の審査を務めさせていただきました。コロナ禍の厳しい状況となって3年目の開催となりましたが、筆を振るってご出品くださった皆さまに心から敬意を表するとともに、数多くの力作に再び出合えたことを大変うれしく思っております。

大賞には、調和体部門から徳廣彩圭さんの「山村暮鳥の詩」を選ばせていただきました。墨色が鮮烈で美しく、堂々とした迫力ある力強い文字と、3行にわたる小ぶりで優しい文字との対比やバランスも抜群です。短い詩に「岬」の文字が何度も出てくる難しい構成にあえて挑んだ徳廣さんの意気込みも感じられ、まさにキラリと光るものがありました。

準大賞には、漢字部門から3名。富松美峰さんの「李白詩」は、弾力性に富む強靭(きょうじん)な筆意で、いきいきとした金文の世界を作り上げています。重厚さと明るさが際立つのは、黒と白の均衡が程よく保たれているからでしょう。中嶋寿香さんの「陶渕明の詩」は、のどかな故郷の風景や清遊を歌った叙景詩を、行草書で叙情的に表現しています。一字一字にうねりをきかせながら、最後には着地がピタッと決まる鮮やかな筆さばきは秀逸です。3行目「酬」字と4行目「中」字の長い縦画がアクセントになりつつ、同時に空間の妙も生み出しています。松本恵仙さんの「陶淵明の詩」は、晩年の陶淵明が時の流れの速さや寂しさについて書きつづった詩を、細身でかれんながらも芯の通った行草書で書き進めています。墨継ぎによる潤滑のメリハリと流麗な筆運びが、美しい旋律を奏でています。

かな部門からは、山口越周さんの「春雨に」。春雨にぬれた山吹の美しさ、月影を映す水が凍った様子、どちらも水にちなんだ短歌2首を上品な淡墨で表現し、ゆったりとした連綿でおおらかにすがすがしくまとめています。

少字数書部門からも1名。前田玄鳳さんの「動」は、文字通り動きと勢いのある書で、偏とつくりによる軽重の調和が見事です。印も作品全体を締める絶妙な位置に押されています。

一般公募からは、佐賀県知事賞に森山南斗さんの「趙執信詩」を選びました。構築的な造形に対する効果的な余白、にじみとかすれが織りなす疎密の妙など、古代文字をモダンな感覚で捉えています。

高校生部門も前回同様、彼らの力量に驚きました。乙瑛碑の臨書は雄渾(ゆうこん)な造形と波磔の美しさ、傅山の連綿草はグルグル目が回るような奇抜な書風、呉昌碩の行書は充実した力強い筆致、かなはなまめかしさとのびやかな線がそれぞれ強く印象に残りました。

今回も最高のパフォーマンスを発揮した皆さまの作品を、ぜひ会場でじっくりとご覧いただければ幸いです。



通期展示(50音順)
【顧問】
高尾秀嶽
山口流芳
米倉基峰
力武宇山

【審査会員】
相川麗水
荒瀬誠峰
池田啓秋
浦田瑛雪
江川佳苑
大串涯山
大串曲汀
大串祥篁
大橋永佳
川島恵風
木下紫陽
行〓(徳の心の上に一)照苑
草野煌月
熊本夕生
古賀訟子
古賀正蘭
古賀龍雲
三藤遊海
志岐敏光
島松まつ枝
志波梧楠
角田龍仙
瀬戸口竹城
田口昭子
竹之内幽水
野中朱石
野中白雲
羽室彩雲
林蘭山
原春景
秀島清坡
藤松翠汀
牧山黄華
増本暁舟
溝上三紀子
森園雅舟
森田瑞華
森山映泉
山口耕雲
山口芳林
山下竹翠
山田博道
横田玉鳳
吉村玄雲
米倉千鶴


※徳廣彩圭さんの徳は、徳の心の上に一
 

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