佐賀県書道展

現在位置:
  • トップ
  • 新着情報
  • <講評>「余白」は必要な空間 島谷弘幸・審査委員長(九州国立博物館長)

<講評>「余白」は必要な空間 島谷弘幸・審査委員長(九州国立博物館長)

2019年05月29日 18時38分

 書の評価には、いくつかの要素がある。まずは、造形の美しさと研ぎ澄まされた線質である。これに、全体のバランスや余白の美しさが加わり、いかに筆者の美意識が自然に表現されているかが肝要となる。

 私の審査は、技巧が一定水準にあることを確認し、全体の調和や余白の処理などの完成度に目が移る。私は、自然で全体のバランス感覚の優れているものを選ぶ傾向があるようである。その意味でいうと、余白は余った白い部分ではなく、必要な空間ともいえるであろう。

 さて、大賞に選出したのは、調和体の部門に出品された三藤遊海さんであるが、一昨年と昨年と準大賞であった、という。私は、2017年には「強調したい部分を大きく強く、行頭・行末の処理も巧みで、気脈も一貫している」、2018年には「筆の弾力を十二分に使いこなした傑作である」、と評している。そして今年は、文字の配置の妙と、練磨された線質によって作られた文字と文字の響き合い、滲(にじ)みと擦れのバランスや余白の処理が見事である。年ごとの精進が、結実したといえよう。

 次に、準大賞では少字数書の部門から荒木晴美さんの「驚」を選んだ。墨色の美しさと、漲(みなぎ)る筆の勢い、造形美が見事であった。右端の中央部から上に滴る墨は、硯(すずり)から第一画へのものである。そして一画目の叩きつけるような飛沫も自然であり、最後の「馬」の部分の筆の粘りも見事だった。漢字部門からは3人。木下紫陽さんの行草作品は、上から下へのリズミカルな筆の流れと文字の中での横画が良く効いており、その技量は抜群である。山田映泉さんは篆(てん)書(しょ)の筆法に習熟されている。各所に配された細く洗練された線が効果的で、落款の入れ方も美しい。北村鈴泉さんは墨の滲みと擦れ、躍動する筆の動きが見事である。品良く纏(まと)め上げた佳作である。かなでは、藤松翠汀さんの紙面に食い込むような筆致と平仮名の「よ」「え」などの遠くから紙に突き刺さるような点などが印象的である。作品に多様な表現を用いながら、巧みに仕上げている。最後のお一人は墨象の糸山哲山さん。折りしもブラックホールの撮影が話題になっているが、まるで旋回しながら筆を運び、星を導くような中央の墨書である。加えて、重なる細い筆線と右に配される図形から、全体の遠近感を創出している。いろんな解釈が出来る示唆に富んだ優品である。

 最後に出品の皆さんへのお願いである。多くの方が印章の押印が粗雑であった。印を含めて作品であるので、印選びと適切な押印に心掛けてほしい。


審査会員(50音順)

(通期展示)

相川 麗水

荒瀬 誠峰

池田 啓二

浦田 瑛雪

江川 佳苑

大串 涯山

大串 曲汀

大橋 永佳

川島 恵風

行德 照苑

草野 煌月

熊本 夕生

古賀 正蘭

古賀 龍雲

志岐 敏光

島松まつ枝

志波 梧楠

角田 龍仙

瀬戸口竹城

髙尾 秀嶽

田口 昭子

竹之内幽水

野中 瑛碩

野中 朱石

野中 白雲

林  蘭山

原  春景

秀島 清坡

福地 秀鵬

牧山 黄華

増本 暁舟

溝上三紀子

森園 雅舟

山口 耕雲

山口 芳水

山口 芳林

山口 流芳

山下 竹翠

山田 博道

横田 玉鳳

吉田 香陽

吉村 玄雲

米倉 基峰

米倉 千鶴

力武 宇山


 

新着ニュース