2024年05月06日 06時00分
伝統と誇りを胸に選手たちが激しくぶつかり合った。佐賀市のSAGAスタジアムで行われた佐賀新聞創刊140周年記念の「第28回佐賀招待ラグビー 早稲田大学対慶應義塾大学」。佐賀で「早慶戦」を観戦しようと3585人のラグビーファンが来場し、迫力あるプレーに魅了された。 開場3時間前の午前8時ごろから来場者の姿が見られ、同11時ごろには会場の外周に約200メートルの列ができた。一番乗りした北浩行さん(61)、恵さん(61)夫妻は神奈川県から駆け付け、「毎年、春の試合は新チームの色が出始める時期。どんな試合をしてくれるか楽しみ」と声を弾ませた。 大学最高峰リーグでしのぎを削る伝統校同士で、立ち上がりから拮抗(きっこう)した試合を展開した。慶大が先制トライを決めると、応援席が一気に盛り上がった。福岡市の会社員南善晴さん(34)は慶大ラグビー部OBで早慶戦に出場した経験があり、「早慶戦はどの試合よりも気合が入った。慶大の伝統の粘り強いタックルを多くの人に見てもらえてうれしい」と笑みを浮かべた。 徐々に早大が試合の主導権を握り、えんじ色の法被やラガーシャツを着た早稲田大校友会佐賀県支部の一団が「観客にも(本場の)早慶戦の雰囲気を感じて楽しんでほしい」とスタンドをひときわにぎわせた。トライを奪うたびに応援歌「紺碧(こんぺき)の空」や校歌の合唱が響いた。 ノーサイドを告げる笛が吹かれると、選手たちの健闘をたたえる温かい拍手に包まれた。ピッチサイド席で観戦した多久市の吉岡千代枝さん(73)は「試合中のボールが直撃してびっくりしたけれど、今後の話のネタになる。ルールを教えてもらいながら楽しんだ」と間近で見た選手のプレーに満足げだった。 試合後、「伝統の一戦をこの地でやれてうれしい。完全ホームだった」とあいさつする大田尾竜彦監督を、母こずゑさん(76)=佐賀市=はスタンドで目を潤ませながら見つめた。「佐賀の地で育ち、支えてもらい、早稲田の監督として帰ってきて早慶戦をさせてもらった。本当に感謝です」と胸に手を当てた。(鶴澤弘樹、志垣直哉、中村健人)