2023年01月01日 16時00分
今回、初めて一般公開される油絵「ノスタルジア」(個人蔵)。夢二が晩年、米国に滞在していた1931~32年ごろに描いたものだ。 米国の日系人宅の地下ガレージから発見された。何度か雨水に漬かったというが、幸い油絵のため、大きな損傷は免れた。 夢二は、大正末ごろには再生の願いを込めて画号を「夢生」と改めており、右肩には「夢生画」と白地で大きくサインが入っている。三味線をひく女をモチーフにした夢二作品は珍しくなく、このようなポーズのたまきの写真も残っている。 米国に渡った夢二は、現地の日本人社会で絵を売り、念願だったヨーロッパ周遊の資金を得ようともくろんでいた。だが、1年以上にわたった米国の生活は、惨めな結果だった。当時の米国は大不況の真っただ中。しかも、絶大な人気を誇った日本とは違い、夢二の名前を知らない在留邦人も多く、絵も売れなかったという。 宝船といえば、七福神や米俵、宝物を積んだ船を思い浮かべるはず。年越しの晩、枕の下に差し入れておくと、良い初夢が見られる縁起物。初日の富士を背景に、三味線をつまびく女性と共に小さな船に乗り込む。帆には椀(わん)と鎌の絵。これが、夢二理想の宝船か。 キノコのような帽子をかぶった幼子と共に、画面中央にたたずむ母。奇抜な水玉はまるで、現代アーティスト草間彌生のデザインのよう。 ファッション雑誌にも絵も手がけていた夢二。最新の流行を知るため、海外のファッション雑誌からも学んだ。この絵は、ポーランドの画家エドアルド・オークンの「きのこの家族」にインスピレーションを受けたものだという。 「紫に 築地も暮(くる)る 春の雪」。詩人画家として活躍した夢二。絵に詩を書き添える画賛も数多く残す。 正月らしい、あでやかな水色の着物姿の女性が、羽子板に興じる。紅色の帯にあしらわれた梅の花。粋に着崩したような襟からは白いうなじがのぞく、夢二らしい美人画。 九州では初公開の作品。依頼されて描かれたものだという。女性が梅の枝に手を伸ばす様が愛らしく、春の訪れを感じさせる。後ろ姿も得意としていた夢二だけに、黒地に大胆な竹の柄の帯も楽しい。夢二自ら浴衣や帯のデザインまで手がけており、その技術が美人画の中でも生かされている。