2023年01月11日 06時00分
夢二が亡くなる前年の1933(昭和8)年、ドイツのベルリンで描いた作品。榛名湖(群馬県)を背景に、手すりにもたれる着物の女性のモデルは、夢二が37歳の時、病でこの世を去った最愛の女性彦乃だ。 念願だった洋行の終盤だったが、夢二は打ちひしがれていた。横浜を出発し、最初にたどり着いた米国では、怠りなく準備した展覧会だったにもかかわらず、閑古鳥が鳴くありさま。折あしく世界恐慌の波と重なり、絵はまったく売れなかった。 米国を離れて欧州各地に立ち寄るも、やはり成果は芳しくない。数々の浮名を流してきた夢二自身だったが、女性スキャンダルの影響で日本ではすっかり落ち目となっていた。再起をかけて渡った海外で再び名声を得て、意気揚々と帰国するもくろみは大きく外れた。 病の影も忍び寄っていたころ。日本を遠く離れて郷愁の念が募ったのだろう。彦乃と旅した最も幸せだった思い出の光景が、夢二の絶筆となった。(福本真理) ▼新春特別展「竹久夢二展」は2月12日まで、佐賀市の県立美術館で。開場時間は午前9時半~午後6時(最終入場は午後5時半まで)。休館日は1月16、23、30、2月6日。 観覧料は一般1000円、中高生500円。小学生以下無料。佐賀新聞プランニング、電話0952(28)2151。