2023年01月12日 06時00分
1918(大正7)年8月、夢二は次男の不二彦を連れて長崎へ旅に出た。異国情緒に憧れていたからだ。 以前から手紙でやりとりしていた、長崎・銅座に邸宅を構える美術コレクターで豪商の永見徳太郎の家に世話になった。永見は夢二のほか、歌人の斎藤茂吉や、作家の芥川龍之介、菊池寛、谷崎潤一郎といった著名な文化人たちと交友を持つ。 長崎滞在中、夢二はさまざまな景色をスケッチし、東京に戻ってから色を付けた。「長崎十二景」と題して永見へ贈られた作品には、眼鏡橋、浦上天主堂、出島など長崎の名所を背景に人物が描写されている。 島原まで足を伸ばして、盆の「精霊流し」も見たのだろう。歌舞伎の道行きをモチーフにしたような構図で、男女を描いている。 夢二を追って、最愛の女性である彦乃がやって来るも、彦乃の体調は万全ではなく別府で療養。その後、彦乃の父親に2人は引き離され、見舞うことさえかなわず、彦乃は25歳の若さでこの世を去った。=おわり (この連載は福本真理が担当しました) ▼新春特別展「竹久夢二展」は2月12日まで、佐賀市の県立美術館で。開場時間は午前9時半~午後6時(最終入場は午後5時半まで)。休館日は1月16、23、30、2月6日。 観覧料は一般1000円、中高生500円。小学生以下無料。佐賀新聞プランニング、電話0952(28)2151。